「外国人の不法就労」について、実は、意外にもよく知られていません。「これが『不法就労』だとは知らなかった」という方は少なくないのです。
知識不足のために、不法就労しているという認識のないまま、不法就労させてしまう経営者は意外に多いです。
では、「不法就労」とは、どんな状態の就労をいうのでしょうか?
①不法滞在者や被退去強制者が働くこと
②出入国在留管理庁から就労許可を得ていないのに働くこと
③出入国在留管理庁から認められた就労許可の範囲を超えて働くこと
上記のような外国人の就労が「不法就労」になります。
特に③が一番分かりにくく「不法就労助長罪」になる場合もあり、注意が必要です。
さて、今回のブログでは、「外国人の不法就労」と、「知らずに不法就労させない為の注意」についてお話します。
このブログは、外国人雇用と就労ビザに特化した情報を発信しているブログです。
記事を書いているのは、行政書士akiyama(就労ビザが専門の行政書士秋山治子)です。
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外国人の雇用や就労のビザについての疑問、お困り事等、どうぞお気軽にご相談ください。
不法就労とは?
まず、最初に、外国人の「不法就労」とは、以下のような就労になります。
①不法滞在者や被退去強制者が働くこと
②出入国在留管理庁から就労許可を得ていないのに働くこと
③出入国在留管理庁から認められた就労許可の範囲を超えて働くこと
①の不法滞在者が就労する。
在留期限が切れている外国人が仕事をする。これらは、比較的想像しやすいかもしれません。
ですが、②と③は、外国人雇用の知識等がなければ、分かりにくいかもしれません。「知らずに不法就労」パターンに当たる場合があります。
例えば、留学生が、出入国在留管理庁から「資格外活動許可」を取らずに働くことは、不法就労になってしまいます。
「留学」ビザで働ける「週28時間までの制限」を超えてアルバイトをする。これは、「オーバーワーク」で不法就労です。
そして、このような留学生アルバイトを雇った雇用主は、「不法就労」の状態の学生を雇用することで、「不法就労助長」をしているということになります。
それでは、上記の①②③について、もう少し詳しく見ていきます。
不法滞在者や被退去強制者が働くこと
さて、最初は①の「不法滞在者や被退去強制者が働くこと」です。
以下のような「日本にいてはならない不法滞在者」が働くケースです。
・退去強制されることが決まっている人が働く
・在留期限の切れた人が働く
・密入国した人が働く
これらは、比較的分かり易いですね。
出入国在留管理庁から就労許可を得ていないのに働くこと
次は、②の「出入国在留管理庁から就労許可を得ていないのに働くこと」です。
・観光など短期滞在目的の人が働く
・留学生の人等が資格外活動許可を受けずにはたらく
本来、「留学ビザ」(「留学」の在留資格)は就労が認められていません。➡詳しくはこちら
では、アルバイトしている留学生は「不法就労」なのでしょうか?
いいえ、アルバイトしている留学生は「不法就労」ではありません。留学生たちは、出入国在留管理庁から「資格外活動許可」をもらってアルバイトしています。
ですので、アルバイトで外国人を雇用する時は、必ず、在留カードを見せてもらってください。
詳しくはこちら➡在留カードの見方・確認部分
判断に困った時はご相談ください。
出入国在留管理庁から認められた就労許可の範囲を超えて働くこと
そして、③の「出入国在留管理庁から認められた就労許可の範囲を超えて働くこと」です。
この③のパターンの不法就労は、知ることがなかなか難しいのです。
例えば、以下のような場合が当てはまります。
・在留資格で認められている業種ではない仕事をしている
・在留資格で認められている時間数を超えて働く
ブログの最初でもお伝えしました。
留学生が、「留学」ビザで働ける許可の「週28時間までの制限」を超えてアルバイトをすれば、③の不法就労になります。
ところで、新卒採用で留学生に内定を出す場合は、必ず、アルバイトで「週28時間までの制限」を守っているかご確認ください。
内定を出しても、オーバーワークがあれば就労系のビザ取得は出来なくなります。ご注意ください。
次に、「知らなかった」という知識不足から、「不法就労」になってしまいがちなケースを、ご紹介します。
知識不足から「不法就労」になってしまいがちなケース
以下は、知識不足から「不法就労」になってしまいがちなケースです。働かせた雇用主も「不法就労助長罪」になります。ご注意ください。
・失踪した技能実習生を働かせる「技能実習生は決められた仕事以外出来ないしアルバイトできない」という事を知らない。或いは知っていても、人材不足の為働かせる
・「通訳」、「経理」、「営業」、「エンジニア」等、専門性のある職種で採用した人材に、清掃業務、荷物運び、工場のライン、レジや品出し等の単純作業をさせている
・留学生は週28時間以内の就労しか認められていない。にもかかわらずそれを守らずオーバーワークさせている
・外国人から「就労ビザを持っている、期限も有効である」と言われたので雇ったところ、知らずに入管局から認められた仕事以外の仕事をさせていた。(「就労ビザ」ならどんな仕事でもできると思っていた)
当事務所への、上記のような相談は、とても多いです。
特に、ご相談くださるのは雇用主様です。
「不法就労」は、外国人労働者本人だけでなく、会社にも大きく影響があります。
上記のような就労は、絶対にしないでください。
悪質な人材紹介会社や語学学校に騙されないように
ところで、上記のようなケースが「不法就労」である事を認識している。その上、雇主が「不法就労助長罪」になると知っている。
にもかかわらず、人材を紹介してくる、人材紹介会社や語学学校があります。
そして、ビザを取るために業種を偽った書類作成をしています。
驚くことに行政書士を名乗った人物と共に、雇用主を騙して偽りの書類を作成する会社もあるようです。
当事務所には、このような悪質な人材紹介会社や、語学学校に騙されたという相談があります。
「不法就労助長罪」にならない為の注意:外国人雇用の基礎的な知識は必要
会社側が外国人を不法就労させたり、不法就労のあっせんをすると、「不法就労助長罪」となります。
では、「不法就労助長罪」とは、どんな罰則なのでしょうか?
不法就労助長罪:3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはその併科の対象になります。
たとえ会社側が確認不足や認識不足で、過失により不法就労させてしまった場合でも、処罰を逃れることはできません。
「知らなかった!」では済まされないのです。
ですが、「不法就労助長をして書類送検されている会社」は、大手の会社や老舗のお店でもあります。
その為、中小企業でも「大きな会社がやっているから大丈夫だろう」と考える事業主がいます。
「老舗がやっているから問題ないだろう」と考えないでください。
「不法就労助長罪」にならない為にも、外国人雇用の基礎的な知識は持っておくようにしてください。
上記の「「不法就労」になってしまいがちなケース」は、絶対にしないでください。
そして、作成してもらった書類は必ず確認してください。おかしいと感じたら入管局や、就労ビザの専門家にお問合せ下さい。
「不法就労助長罪」にならない為の注意:在留カードの確認をする
不法就労助長罪を防ぐためには、在留カードを確認するということです。
それでは、在留カードの確認ポイントを見てみましょう。
【確認ポイント】
①本人確認
②在留期限確認(オーバーステイしていないか?)
③就労可能か否かの確認
④「留学」「家族滞在」などのビザは、資格外活動許可を得ているかの確認
➡在留カードの見方等更に詳しくはこちらから
在留カードの判断が難しい場合は、入管業務に詳しい行政書士などの専門家に確認されると安心です。
ところで、出入国在留管理庁のHPには「出入国在留管理庁在留カード等番号失効情報照会」もあります。
在留カードが失効していないかを確認するサイトです。
「出入国在留管理庁在留カード等番号失効情報照会」➡こちらから
「不法就労助長罪」にならない為に、在留カードの確認をしっかりしてくださいね。
外国人の不法就労とは?【知らずに不法就労させない注意】まとめ
さて、今回のブログでは、「外国人の不法就労」と、「知らずに不法就労させない為の注意」についてお話ししました。
不法就労しているという認識のないまま、不法就労させてしまう経営者は意外に多いです。
特に、「入管局から認められた就労許可の範囲を超えて働く」は、注意が必要です。
このケースは分かりにくく「不法就労助長罪」になる場合もあります。上記の「知識不足から「不法就労」になってしまいがちなケース」の再確認をおねがいします。
そして、外国人を雇用する場合は、必ず在留カードの確認をお願いします。
外国人雇用や就労ビザは、なかなか複雑です。もし、何か疑問やご相談がございましたらどうぞお気軽にご連絡ください。
今回のブログが少しでもお役に立てれば大変嬉しいです。
出典:在留カード等番号失効情報照会(出入国在留管理庁)