育成就労の入国後講習科目「法的保護講習」を技能実習から見る

外国人雇用

今回のブログでは、現行の「技能実習制度」を参考に、2027年(令和9年)4月1日から運用開始の「育成就労制度」の入国後講習科目でもある、法的保護講習についてお話したいと思います。

技能実習制度の入国後講習の科目には、

「③ 出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法その他技能実習生の法的保護に必要な情報」という科目があります。

これが、通称「法的保護講習」です。

日本で働く外国人技能実習生は、「外国」である日本国で仕事をします。

技能実習生は、当然のことながら、日本の法律を知りません。自分たちの権利を知ること、何かあった時の相談窓口を知る必要があります。

日本で、安心して働くことができるように、日本の労働関係の法令や入管制度などについて勉強するのが、「法的保護講習」なのです。

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入国後講習とは?

「入国後講習」というのは、技能実習制度や2027年開始予定の育成就労制度で、外国人が日本に入国した後、実際の仕事をする前に実施される講習です。

法律によって定められている座学を中心とした講習のことです。

この講習を受けている間は、技能実習生に仕事をさせてはなりません。

技能実習制度や育成就労制度の講習です。ですので、これら以外の在留資格の外国人は受けません。

ところで、私は2019年から技能実習生の講習をさせて頂いています。

2019年頃は、仕事に関する労働関連の講習を熱心に聞く実習生が比較的多かったような気がします。

ですが、コロナ禍以降は技能実習後の進路として「特定技能」に関心のある技能実習生がとても増えた印象です。

その為、講習では特定技能の仕事の紹介もするようにしました。

入国後講習の科目は?

まずは、「入国後講習」の科目を確認してみましょう。

以下が技能実習制度における「入国後講習」の科目です。

ロ 科目が次に掲げるものであること。
(1) 日本語
(2) 本邦での生活一般に関する知識
(3) 出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法その他技能実習生の法的保護に必要な情報(専門的な知識を有する者(第一号団体監理型技能実習に係るものである場合にあっては、申請者又は監理団体に所属する者を除く。)が講義を行うものに限る。)
(4) (1)から(3)までに掲げるもののほか、本邦での円滑な技能等の修得等に資する知識

引用:「技能実習制度 運用要領 ~ 関係者の皆さまへ ~」令和8年4月 出入国在留管理庁・厚生労働省 編P72

上の(3)にある科目が「法的保護講習」です。上記の科目は、育成就労制度でもほぼ同じです。

① 日本語
② 本邦での生活一般に関する知識
③ 出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法
その他育成就労外国人の法的保護に必要な情報
④ 本邦での円滑な技能の修得に資する知識

引用:育成就労制度の関係省令等について(P4:入国後講習・日本語講習) 

ただ、日本語の時間数等には変更点があります。

育成就労制度の日本語等、科目について詳しくはこちらからご覧ください。

それでは、技能実習生の入国後講習に含まれる通称「法的保護講習」とはどのような講習でしょうか?

法的保護講習とは?

次に、「入国後講習」の科目「法的保護講習」です。

「法的保護講習」については、上記しました。出入国、労働に関する法令に違反していることを知った時の対応方法と、法的保護を受けるために必要な情報です。

技能実習生は、外国人です。しかも、「日本に来たばかり」です。

日本のことはほとんど知らないと思います。ですので、日本の習慣や生活のルール、もちろん、日本語も学ばなければなりません。

また、最も身近で重要な入管法や技能実習制度を知っておかなければなりません。

更に、仕事関連の法律や、社会保険、税金等の基本的な事項を知る必要があります。

でなければ、自分が日本の社会や会社で、日本人と上手く共生していく為の行い、守るべきルール、何が正しく、何が法的に間違っているかが分かりません。

仮に、会社が法令に違反している行為をしても、外国人はその行為が「違法」かどうか分からない場合もあるのです。

技能実習生が、自分を守ってくれる法律を知っていなければ、「法律で自分を守る」事ができません。

ですので、この「法的保護講習」は技能実習生にとって、極めて重要な科目なのです。

上記したように、「法的保護講習」の重要性から育成就労制度になっても、この「法的保護講習」の科目はあります。

法的保護講習を通じてお役に立ちたい

ところで、「技能実習生への人権侵害行為」や「技能実習生の失踪、犯罪」等のニュースを耳にする事があります。

その為なのか、「技能実習制度」自体が良くない印象をもたれる場合があります。

ですが、私の知る範囲では、雇用する会社や監理団体の方々は技能実生を大切にしています。

問題のある実習生にも、根気強く指導しているところが多いです。

また、技能実習生たちのほとんどの人が真剣に頑張っています。

私は、一生懸命、真面目に、仕事や目標に向かっている技能実習生さんを応援したいと思っています。そして、技能実習生や外国人材を雇用する企業のお役に立つことをやりがいと感じます。

その為にも、法的保護講習では、技能実習生に正しい法的な知識をお伝えしています。

技能実習生が失踪しないように、犯罪に巻き込まれないようにしたいと強く願っています。

そして、人権侵害等に遭わないように、自分を守る為の知識もお伝えします。

講習中は、なるべく、想像しやすいように、分かりやすい事例をあげながらお話するようにしています。

法的保護講習の時間・使用するテキスト・講師

それはそうと、技能講習制度の法的保護講習の時間は、1日8時間講習の実施が基本でした。

技能実習生の法的保護講習は、技能実習法令、入管法令、労働関係法令、その他必要な情報です。それを合計8時間で説明します。その説明は通訳さんに通訳してもらいながら進めます。

育成就労制度も「育成就労制度の関係省令等について」によると8時間との事で、時間数は技能実習制度と同じです。

法的保護講習のテキスト(教材)

次に、育成就労の入国後講習の教材についてはどうでしょうか?

2026年10月に外国人技能実習機構に育成就労の入国後講習の教材について、問い合わせてみました。

「育成就労外国人手帳」のリリースはあると思うが、その内容や発表時期については未定との事でした。

使用する教材については、「育成就労外国人手帳を教材の一つとして必ず使用」と「育成就労制度運用要領」の4-47ページにもありました。

ところで、技能実習制度でも、使用するテキスト教材は「技能実習生手帳」を使用する必要があります。

必要に応じてJITCOの入管法令テキスト・労働関係法令等テキストを活用しても良いと思います。

私も部分的にJITCOのテキストを使っていますが、主に使うのは「技能実習生手帳」です。

法的保護講習を担当する講師

それでは、法的保護講習を担当する講師については、どうでしょうか?

この「法的保護講習」を技能実習生に分かり易く話をする、というのが、法的保護講習を担当する講師の仕事です。

そして、講義内容に関する専門的な知識の有る講師でなければなりません。

専門的な知識とは、入管法や労働関係法などの法律関連の知識や深い理解。

そして、その実務経験など。

それに、不正行為への対応方法、技能実習生を法的に保護するのに必要な情報もなければなりません。

具体的には、行政書士、社労士、弁護士などが講師を担当する場合が多いのではないでしょうか。

法的保護講習の内容

さて、法的保護講習の内容です。

度々で恐縮ですが、育成就労制度の関係省令等についての「入国後講習・日本語講習」には、以下のようなっています。

出入国又は労働に関する法令の規定に違反していることを知ったときの対応方法
その他育成就労外国人の法的保護に必要な情報

引用:育成就労制度の関係省令等について

ですが、上記の通り、育成就労の入国後講習の教材がまだ未定とのことでした。

ただ、育成就労制度の法的保護講習の内容は、技能実習制度の法的保護講習の内容と似ていると思っています。

共通点も多いと思います。

では、ここからは、技能実習生用の教材「技能実習生手帳」を参考にさせて頂きます。

技能実習生がどんな内容を学ぶのかご紹介します。

技能実習生手帳から:法的保護講習の内容

まず、技能実習生手帳の「入管法」に関連する主な項目は以下のような内容です。

・技能実習制度・技能実習法・外国人技能実習機構の役割と相談窓口(機構の他、出入国在留管理庁など)・技能実習生の責務・技能実習にあたっての心構え・法令の適用・犯罪・人権侵害やハラスメント・在留カード・技能実習を行うことが困難になった場合、など
引用:「技能実習生手帳」外国人技能実習機構(OTIT)

実際の講習内容は、手帳に沿ってお話します。ですが、手帳に書かれている内容だけでは、分かりにくい部分や、「法律の勉強」のようになってしまうかもしれません。

ですので、なるべく実習生の方の仕事や生活に結び付きやすい、理解しやすい説明にしています。

例えば、技能実習制度の説明の延長で、特定技能の説明をします。特定技能の説明に関しては皆さん、かなり熱心にメモをとりながら聞いてくれます。

また、技能実習法だけではなく、責務や心構えでも、アルバイトや別の仕事はできない事は何度もお伝えします。

もちろん、罰則についても話します。

人権侵害と失踪

次に、「人権侵害」についてです。手帳には、代表的な人権侵害行為として、パスポートや在留カードを会社で保管する、私生活の自由を不当に制限する等が書かれています。

その他、暴力をふるう事、お給料・残業代を支払わない事等も「人権侵害行為」です。

講習では、このような「人権侵害行為」があった時は、監理団体や外国人技能実習機構に報告する事や、外国人技能実習機構の「やむを得ない事情がある場合の実習先変更」をお伝えしています。

ですが、最近では技能実習生の方が強くなって、自分たちの権利ばかり主張する人もいるらしいとの話を聞くときもあります。

また、冗談が通じなくて軽く頭に触れても暴力と騒ぎ立て転職を求める実習生もいるとか。

ですので、講習では文化や習慣の違いを伝える事、それに、頭を軽く触る場合の意味、つまり冗談と本気の見分けについても説明する等もお話します。

ところで、SNS等の勧誘で「失踪」する技能実習生もいます。入管のホームページにも注意喚起があります。

私は、講習中、「甘い誘いには気を付ける」、「技能実習生を狙ってSNSで犯罪に誘う悪い人がいるのでくれぐれも注意する。」ということをお話します。

失踪して別の仕事をすることは、入管法の資格外活動違反として退去強制の対象となりえること。そして、犯罪として処罰される場合もあること。

入管法の罰則等とともにお話して、失踪するとどのようなことになるかもしっかりとお伝えしています。

在留カードとパスポートなど

さて、続いてパスポート、在留カードですが、これらは、当然のことながら本人が管理しなければなりません。

パスポートと在留カードについては、「技能実習生手帳」には詳しい記述があまりありません。ですので、通常の注意事項の他、下記の情報等や災害関連に関してもプラスし、お伝えしています。

・在留カードは財布の中に入れておいてください。(旅券等の携帯(入管法第23条))
 (警察官や入管の人に求められたら見せてください。)
・在留カードに書いてある内容に変更があれば14日以内に届けてください。
 (住所変更は市区町村の役所。その他の変更は入管。)
・在留カードは2026年6月14日から新しくなりました。
・寮(住む場所)が決まったら役所でハザードマップをもらって避難所を確認してください。
・パスポートは国籍の証明です。災害で非難する時は持って逃げてください。
 (災害が起きた時パスポートを取りに行けない場合は、命を守ることを優先して逃げてください。)

技能実習生の住所変更は監理団体がしてくれると思います。

ですが、今後ずっと日本で生活するなら、変更の届け出は絶対に覚えておかないと、在留カードの更新に関わってくるので注意が必要です。

それと、最近特にひどくなった自然災害です。私は災害や避難についても詳しくお話しています。

監理団体と連絡が取れなくなるような大災害がくるかもしれません。そんな時、頼りになるのは近くの日本人です。ですので、日本人との共生についてもお話します。

労働関係について

次に、技能実習生手帳の「労働関係法令」に関連する主な項目は以下のような内容です。

・労働契約・労働基準法・最低賃金制度・労働時間・休日・時間外、休日、深夜労働・年次有給休暇・労働安全衛生法・保険と年金・労災保険・雇用保険・脱退一時金・所得税と住民税・賃金計算の知識・相談窓口(労働基準監督署など)
引用:「技能実習生手帳」外国人技能実習機構(OTIT)

労働契約書で必ず確認する項目のお話や法定労働時間や残業の割増率等、日本で働く上で最低限知っておくべき知識をお話します。

それに、建設業の場合、月給制であることはあらかじめお伝えしています。

ですが、月給制の考え方と、現場までの移動時間が賃金の対象ではない事は、理解しにくいようです。

その時は、「はい、わかりました!」と実習生たちは言います。ですが、それらの理解が出来ていない人もいて、監理団体の担当者さんが再度説明しているようです。

また、給料から控除される金額の計算や「手取り金額」、「給与明細」の味方についても説明します。

労働関係で理解しにくい部分

ところで、上記しましたが、理解しにくい事項もあります。

具体例で説明しますが、理解できない場合も、もちろんあります。

そのような時のためにもキーポイントになる考え方はノートに書いてもらっています。

「そういえば入国した時法律の勉強したな」と、少しでも思い出してもらえるように。

例えば、契約書の見方、労働時間・休日・残業のこと、年次有給休暇に関する事項、最低賃金のこと、社会保険に関する事項や事例説明、年金の脱退一時金に関する事項、税金に関する事項等、です。

育成就労の入国後講習科目「法的保護講習」を技能実習から見る:まとめ

今回のブログでは、「技能実習制度」を参考に、2027年4月1日から始まる「育成就労制度」の入国後講習科目でもある、法的保護講習についてお話しました。

法的保護講習というのは、日本に来たばかりの技能実習生が受ける講習です。

日本に来たばかりの彼ら(彼女ら)は日本の法律を知りません。自分たちの権利を知ること、何かあった時の相談窓口がどこなのか、知る必要があります。

彼ら(彼女ら)が、日本で安心して働けるように、日本の労働関係の法令や入管制度などについて勉強するのが法的保護講習です。

さて、新しく始まる「育成就労制度」での「法的保護講習」の内容も、技能実習生でのそれと共通する部分があると思います。

「育成就労制度」の法的保護講習の時間数、使用テキスト、講師、内容については、出典にある資料のからの引用です。共通点が見えてきます。

また、今回は私の体験した法的保護講習での様子や感じた事も書かせて頂きました。

今回のブログの内容が、関係者の方に何らかの形でお役に立てれば幸いです。

育成就労や特定技能の関連業務で当事務所がお役に立てます

ところで、当事務所は、技能実習生の入国後講習講師、監理団体の外部監査人をさせて頂いております。

そして、「外国人の就労ビザ」(「経営・管理ビザ」除く)に特化した事務所です。育成就労制度や特定技能制度の関連業務でお役に立てると思います。

どうぞ、お気軽にお問合せ下さい。

今回のブログが少しでもお役に立てれば大変嬉しいです。