外国人の就労ビザとは?ビザの種類と取得要件をポイント解説

就労ビザ

以前に、以下のブログで「就労系のビザはビザごとに可能な仕事内容が違う」という事をお伝えしていました。

2024年1月6日現在、出入国在留管理庁の在留資格一覧表によると、就労系ビザは20種類あります。

就労系のビザはその種類によって、できる仕事、取得要件、申請に必要な書類等が違います。

外国人が、日本でどんな仕事をするかや、学歴・経験によって、取得するべき就労ビザが異なるのです。

また、会社経営者、会社員、個人事業主によってのビザの違いもあります。

今回のブログでは、就労ビザの種類や取得要件等をわかりやすく、簡単に解説します。

ちなみに、就労可能な在留資格は、通称「就労ビザ」と言われています。在留資格とビザの違いについては以下のブログをごらんください。

このブログは、外国人雇用と就労ビザに特化した情報を発信しているブログです。

記事を書いているのは、行政書士akiyama(就労ビザが専門の行政書士秋山治子)です。

ブログ内容は、「外国人雇用」、「各種就労ビザ」、業界別のビザに関すること、事務所の紹介、業務日誌、事務所を開業した前後の経験など。

外国人の雇用や就労のビザについての疑問、お困り事等、どうぞお気軽にご相談ください。

就労ビザの種類を事例からみる

まずは、就労ビザの種類です。就労ビザは下の表にある通り19種類+1種類です。

ご覧のように就労は「活動制限あり・指定される活動による」とあります。入管庁(出入国在留管理庁)で許可された業務内容でしか仕事ができません。

外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(出入国在留管理庁)

さて、「19種類+1種類」で、就労が認められるビザは、20種類です。

この20種類の就労ビザは上記の表だけでは、ちょっと分かりにくいかもしれません。いくつか例を挙げてみます。

例えば、同じ「お給料をもらって働く」会社員でも、仕事内容によって取得する就労ビザは違います。

・弁護士、公認会計士などの資格をもつ専門職の外国人は「法律・会計業務」ビザ
・医師、歯科医師などの資格をもつ専門職の外国人は「医療」ビザ
・エンジニアや通訳は「技術人文知識国際業務」ビザ

・レストランのコックさんやソムリエは「技能」ビザ
・介護関連の施設等で仕事をする、介護福祉士の資格をもつ外国人は「介護」ビザ
・海外の日系企業の支店や子会社等から、日本にある本店や支店等へ転勤や赴任、出向をする場合は「企業内転勤」ビザ

また、例えば、同じ「英語の先生」でも取得する就労ビザ違います。
・小学校、中学校、高等学校等の英語の先生は「教育」ビザ
・私企業の「英会話スクール」等の英語の先生は「技術人文知識国際業務」ビザ

そして、会社員ではなく、企業等の経営者・管理者は「経営・管理」ビザです。

取得が多い主要な就労ビザ5種

ところで、就労ビザ20種類の中で、当事務所にご相談が多いのは以下の5つです。一般的にも、これら5種類のビザを取得されているケースが多いと思います。

「技術・人文知識・国際業務」ビザ
就労ビザの代表で、2023年6月末時点では約34.6万人が取得しています。専門知識を活かした事務系のビザです。

「特定技能」ビザ
日本の深刻な人手不足対策に対応するため2019年4月に新設されたビザです。現場等で、幅広い業務において外国人の労働が可能になりました。

「技能実習」ビザ
2023年6月末時点では約35.8万人になります。技能実習制度は、本来の目的と現実が乖離し人手不足解消手段になっており、また、様々な問題もあります。

そこで、2023年11月に、政府の有識者会議は今の制度を廃止するとした最終報告書をまとめました。以下のブログもご参考頂ければと思います。

「特定活動46号」ビザ
2019年5月に法務省告示の一部が改正されてできました。インバウンド接客に最適なビザです。

「介護」ビザ
2017年9月1日から施行されたビザです。介護福祉士養成施設を卒業し、介護福祉士国家資格を取得した留学生が取得するパターンが比較的多いです。

それでは、次からは、上記5つの主要な就労ビザのポイントを簡単にご紹介していきます。

「技術・人文知識・国際業務」ビザ

まずは、「技術人文知識国際業務」ビザです。

ちなみに、「技術人文知識国際業務」ビザは、略して「技人国」ビザと言われています。(以下、「技人国」ビザ)

「技人国」ビザは、専門知識を活かしたホワイトカラーの事務系職種のビザです。

学歴(職歴)と業務内容との関連性があることが、最も必要な基本的な要件です。

外国人の専門的な知識やスキルを活かせる業務内容ではない場合は、基本的に「技人国」の在留資格は取得できません。

また、「契約を結んだ会社等の経営に安定性・継続性があること」も重要です。

会社の経営状態が安定していることが必要です。そのため通常は決算書類を証明資料として提出します。

そして、「同一業務に従事する日本人と同等額以上の報酬を支払うこと」を忘れないでくださいね。

具体的な職種:
・理系

電機・機械・IT関連業務のシステムエンジニア、システム設計、ソフトウェアの開発、プログラマー、システム解析、テクニカルサポート、製品開発、技術開発や研究など。

・文系

経理、貿易、経営、営業、総務、人事管理、マーケティング、販売促進、商品開発、通訳翻訳、語学教師、国際担当業務、海外担当取引業務、デザイナー、広告宣伝業務など。

「特定技能」ビザ

次に、「特定技能」ビザです。

特定技能ビザは、2019年4月に「特定技能1号」、「特定技能2号」ができました。

日本国内で人手不足が深刻とされている特定産業分野(12業種)において、人手不足解消のため即戦力となる外国人材の雇用が可能になりました。

特定技能ビザでは、これまで就労ビザが取れなかった職種でも、ビザが取得できるようになりました。

そして、付随的業務としてできる仕事の幅も広がりました。ただし、付随的に従事できる内容は、「日本人が通常従事することとなる関連業務」です。

また、特定技能ビザの取得要件には、学歴や職歴年数要件がありません。

ですが、「特定技能」ビザの取得は、他の就労ビザと比べて少し複雑です。というのは、取得ルートによって様々なパターンがあるからです。

今まで技能実習生だった外国人を、そのまま特定技能ビザにするということが一番スムーズです。

ですが、それ以外、例えば、一から取得する場合考えなければならない事が多いです。「特定技能」ビザについては、別のブログでお話します。

特定技能ビザの12分野は?1号と2号の大きな違いは?

さて、上の段落に「日本国内で人手不足が深刻とされている特定産業分野(12業種)において」とあります。

この「特定技能1号」の(12業種)とは、以下の12分野ということです。
・介護
・ビルクリーニング
・素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
・建設
・造船・舶用工業
・自動車整備
・航空
・宿泊
・農業
・漁業
・飲食料品製造業
・外食業

「特定技能2号」について、以前は建設と造船・舶用工業の2分野のみでした。

けれど、2023年6月の閣議決定で、他の分野でも2号が追加になりました。(介護は、在留資格「介護」があるので、介護の特定技能2号はありません。)

ですので、介護以外の上記11分野の「特定技能1号」を終えた人材は「特定技能2号」へ
「特定技能1号」を終えた介護の人材は「介護」ビザへの移行ルートができたということです。

特定技能1号と2号の特に大きな違いを挙げると、在留期間と家族の帯同です。

1号は、在留期間は通算5年までです。しかし2号は、更新の上限はありません。

また、1号は、家族(配偶者・子)と日本で暮らせません。しかし、2号は家族と共に日本で暮らせるのです。

つまり、特定技能2号は、在留期間と家族の帯同が「技人国」ビザや「介護」ビザと同じです。

「技能実習」ビザ

次は、「技能実習」ビザです。

技能実習生の数は上記しましたが、2023年6月末時点では約35.8万人です。

本来の目的は、日本で学んだ技能を母国に伝える「国際貢献のための制度」でした。しかし、その目的と実態が乖離し、技能実習制度は、人手不足解消手段になっています。

また、人権侵害の指摘や、失踪・犯罪事件など、様々な問題が起きています。

そこで、2023年11月に、政府の有識者会議は今の制度を廃止するとした最終報告書をまとめまし。

「廃止」と言っても、完全な廃止ではないです。技能実習制度を「新制度」に名称変更し、目的をこれまでの国際貢献から外国人材の確保と育成に変える方向です。

技能実習ビザについては以前のブログもご参考頂ければ嬉しいです。

「特定活動46号」ビザ

「特定活動46号」ビザは、「技人国」ビザに比べて従事できる業務の幅が広くなります。

技人国ビザでは、大学などで学んだ専門の技術や知識を活かした業務しかできず、現場系の業務はできませんでした。

ですが、「特定活動46号」ビザでは「単純作業」と入管局から見なされる清掃、洗濯、食器洗い、商品の陳列、レジ打ち、簡単な接客も認められます。

ただ、この「単純作業」と見なされる仕事内容は、付随作業として認められます。ですから、これらばかりに従事するということは出来ません。ここは注意が必要です。

取得要件としては以下のようになっています。

・日本の大学を卒業・大学院を修了していること
・日本語能力試験N1等日本語能力が高いこと
・常勤であること
・日本人と同等以上の報酬額であること
・日本語での円滑な意思疎通を要する業務であること
・大学で学んだ広い知識及び応用的能力等を活かせる仕事であること

【特定活動46号ビザの具体的な活動例】

・飲食店、小売店、ホテルや旅館、タクシー会社等での、通訳・翻訳、店舗管理、接客、販売、ドライバー(タクシー会社)業務➡インバウンド業界で働くのには大変適したビザ

・工場のライン、介護施設、食品製造会社等➡現場での仕事も可能なビザ
(ただし、ラインで指示された作業や清掃、洗濯にのみ従事することは認められません。)

「特定活動」ビザとは?

ところで、上記の表には、「就労ビザの種類19種類+1種類」で、20種類のビザがありました。

この中の1種類が、「特定活動」です。

この「特定活動ビザ」は、「現在ある19種類の在留資格のいずれの活動内容にも当てはまらない活動のビザ」です。

法務大臣が個々の外国人について特に活動(仕事の内容等)を指定する在留資格のことです。

在留カード自体には「特定活動」としか記載されていません。ですので、特定活動の詳細を、外国人のパスポートに添付されている「指定書」の記載内容で、日本での活動内容を確認します。

ちなみに、特定活動46号ビザは、「本邦大学卒業者」の在留資格と言われています。

「特定活動」については、以下のブログにもご紹介しています。ご参考になさってください。

「介護」ビザ

さて、最後は介護ビザです。

介護ビザは平成29 年9月から始まりました。介護ビザで在留する外国人数は毎年増加し続けています。令和5年6月末では8,093人です。

当初、介護ビザは、日本の介護福祉士養成施設(専門学校など)を卒業し、介護福祉士の資格を取得した留学生「養成施設ルート」に限り,在留資格「介護」が認められていました。

しかし、令和2年4月1日に在留資格「介護」の上陸基準省令が改正されました。

そして、介護福祉士の資格を取得したルートにかかわらず,「養成施設ルート」以外の「実務経験ルート」で介護福祉士となった方でも,在留資格「介護」が認められることとなりました。

ですので、技能実習生や特定技能1号外国人、留学生の資格外活動による3年以上の実務経験者へもチャンスが広がったということです。

介護ビザの取得要件は、以下のとおりです。

・介護福祉士の国家資格の取得すること
 または、卒業年度の翌年4月1日から5年間継続して介護業務に従事すること

・日本の介護施設と雇用契約を締結こと

・職務内容が「介護」または「介護の指導」であること

・日本人が従事する場合における報酬額と同等額以上の報酬を受けること

上記の「卒業年度の翌年4月1日から5年間介護の業務に従事」に関する要件は、養成施設を令和8年度末(2026年)までに卒業する方への措置です。

就労ビザ5種のうちどのビザを取得するか?

さて、上記で取得要件を含めつつ、主要ビザのポイントをご紹介しました。

同じ就労ビザでも取得要件が違うことがわかって頂けたのではないでしょうか?

それでは、ここで、「どの就労ビザを取得するか?」ということを、もう少し詳しく2つ事例を挙げてお話します。

(留学生のアルバイトは含みませんので、ご了承くださいませ)

以下に挙げた事例は、当事務所へのご相談の多い、業種と職種ですが、大きく2つに分けました。
・事例1:飲食製造業、外食業、宿泊業、農業、介護業の場合

・事例2:小売業の販売職の場合

それでは、見ていきましょう。

事例1:飲食製造業、外食業、宿泊業、農業、介護業の場合

まず、貴社の業界が飲食製造業、外食業、宿泊業、農業、介護業であったとします。取得できる可能性のあるビザは以下になることが考えられます。

・飲食製造業、外食業、宿泊業
 ➡「技人国」、「特定活動46号」、「特定技能」、「技能実習」
・介護業
 ➡「介護」
「技人国」、「特定活動46号」、「特定技能」、「技能実習」
・農業
 ➡「技人国」、「特定技能」、「技能実習」

次に以下の3つに関してクリアにしてください。
① 雇用したい外国人は決まっているのか?
② 雇用したい外国人の学歴・職歴は?
③ 当該外国人にさせたい仕事は何か?

この3つをクリアにしてから、就労ビザに詳しい専門家に相談すると、どの就労ビザの取得が良いのか、ビザについてアドバイスしてくれるはずです。

もちろん、お問合せ頂ければ、私も相談にのらせて頂きます。

事例2:販売職の場合

次の事例は、貴社が小売業で、販売をさせたいケースです。

特にお問合せが多いのは、アパレル系の洋服販売と観光地でのお土産店です。

この2つの事例は就労ビザの取得は難しいですが、証明書類をしっかり準備すれば取得できない事はないです。

・アパレル系の洋服販売➡「技人国」、「特定活動46号」
・観光地でのお土産店➡「特定活動46号」

こちらも、以下の3つに関してクリアにします。
①雇用したい外国人は決まっているのか?
② 雇用したい外国人の学歴・職歴は?
③ 販売職以外で当該外国人にさせたい仕事があるか?(例えば通訳翻訳等)

こちらも、この3つをクリアにしてから、就労ビザに詳しい専門家に相談してみてください。ビザ取得にについてアドバイスしてくれるはずです。

もちろん、お問合せ頂ければ、私も相談にのらせて頂きます。

外国人の就労ビザとは?ビザの種類や取得要件:まとめ

さて、今回のブログでは、外国人の就労ビザの種類や取得要件について、ポイント解説しました。

特に就労ビザの中でも、取得されることが多い以下の5つのビザに関して紹介しています。

「技術人文知識国際業務」ビザ(技人国ビザ)
「「特定技能」ビザ
「技能実習」ビザ
「特定活動46号」ビザ
「介護」ビザ

これらの就労ビザで、どのビザを取得すれば良いのかは、以下の確認が必要であることもお話しました。

① 雇用したい外国人は決まっているのか?
② 雇用したい外国人の学歴・職歴は?
④ 当該外国人にさせたい仕事は何か?

この3つの事項をクリアにした後は就労ビザに詳しい専門家に相談されると安心です。

外国人雇用や就労ビザは、なかなか複雑です。何か疑問やご相談がございましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。

上記の内容が少しでもお役に立てれば大変嬉しいです。

今回のブログ内容引用・出典:まとめ

出典:
在留資格一覧(出入国在留管理庁HP)
外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組(出入国在留管理庁)
外国人技能実習制度について(出入国在留管理庁・厚生労働省人材開発統括官)
令和5年6月末現在における在留外国人数について(令和5年10月13日出入国在留管理庁報道発表資料)
特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定:出入国在留管理庁)
技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第16回)
留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン(出入国在留管理庁)
介護福祉士国家試験に合格して介護等の業務に従事する留学生の取扱いについて(出入国在留管理庁HP)
介護福祉士養成施設を卒業して介護等の業務に従事する留学生の取扱いについて(出入国在留管理庁HP)